日本地理学会春季学術大会巡検(小平)<2002年4月1日>



テーマ:
『東京西郊の都市農業を歩く・みる −その将来的展望を考える−』

主な行程:
西武国分寺線鷹の台駅集合 →玉川上水遊歩道 →創価学園(休憩) →有機野菜の直売所 →短冊状地割と畑作景観 
→小川地区の農家竹内さん宅 →昼食 →小川郵便局 →有限会社東京ドリーム →小平市学校給食センター →流れ解散

巡検の写真はこちら
(10枚程度)


手前は畑,奥は住宅地で短冊状の地割になっている.土地を相続できなくり売却するケースが増えている.【小平市小川町】

(有)東京ドリームとその直売所【小平市小川町】



目的:
日本の農業は,国際競争の下で厳しい対応を迫られている.農産物市場における国際化(市場開放)の進展は,多分に政治的「妥決」を含みつつ,農産物流通を担う資本の農産物調達戦略に規定されて実現化してきた.国際競争の下で,「中山間地域」と称される傾斜地を主たる生産の場としたち域や都市農業地域は,「規模の経済」に対応し難い地域であるだけに,国際化の影響がもっとも先鋭化し具現化するものと考えられる.東京都の農業は日本を代表する都市農業であり,国際競争下における日本農業の存立基盤を考察する上で,少なからぬ意味をもっていると思われる.
東京都の農業は,1960年代以降急速に各種農産物の栽培面積と農業労働力が減少してきた.しかし東京都農業があげる10aあたりの粗生産額は,16.7万円(全国第5位:1999年)であることからも分かるように,都の農業は高度な集約的農業によって高い収益性を保持押している.また,50歳未満の20.9%が基幹的な農業世帯員として農業生産に関わっている.このことは,東京都に農業後継者が多く存在していることを意味している.日本農業の担い手問題がいよいよ深刻化している今日において,東京都農業が一定の存続を実現している現実は,日本農業の存続条件を考える1つの端緒となると思われる.
1999年7月に公布・施行された「食料・農業・農村基本法」には,都市農業の振興に関する条文が明記されている(第36条第2項).輸入自由化,市場原理を積極的に活用した農産物の価格形成をおしすすめる同法の下で,都市農業は今後いかなる役割を担うことになるのだろうか.また,2001年は改正生産緑地法施行後10年目の都市にあたる.都市農業を取り巻く社会・経済環境は,今日大きな岐路にさしかかっているように思える.
そこでこの巡検は,東京西郊の小平市小川地区における都市農業を観察し,生産者および生産者グループとの討論会を通して,都市農業の将来的な展望を考えることを目的として実施する.今回,見学する3つの農家(生産法人を含む)は,いずれも小平市小川地区の農業を代表する担い手である.第1は,伝統的な畑作農業継続する専業農家であり,第2は,近年新たな有機栽培の取り組みを始めた専業的農家である.また,この農家は,40品目におよぶ野菜を栽培し,鮮度のよい安全な野菜を圃場に近接する農産物直売所において商品化している点に特徴がある.第3は,高度な施設型農業(野菜生産工場において「無洗浄野菜」の生産)を行っている生産法人であり,量販店等との契約取引を特徴としている.これら小川地区における中核的な担い手の経営動向を見学しながら,都市農業の将来像について展望を行いたい.
                                                                    (巡検のレジュメより転載)


無人の直売所,消費者と信頼のもとに成り立っている.

有機農産物の直売所.周辺の学校給食にも使用されている.

玉川上水から分かれた小川分水.昔は生活用水として使用されていた.


案内者:
水嶋一雄(日本大・文理) 菊地俊夫(東京都立大・理) 宮地忠幸(日本大・文理) 両角政彦(日本大・院) 大石太郎(東京都立大・院)
石井實(日本文化大) <なお,日本地理学会農村地理学研究グループ(2000・2001年度)が中心となって行った>


関連サイト:
日本地理学会
小平市
グリーンロードのまち こだいら


文献および資料:
矢嶋仁吉(1936):武蔵野小平村に於ける新田集落の地理学的研究.地理学評論.15.
矢嶋仁吉(1954):『武蔵野の集落』.古今書院.
菊地利夫(1986):『続・新田開発 事例編』.古今書院.
小平市(2002):こだいらの農業.小平市生活文化部産業振興課.
東京都労働経済局(1997):東京農業のすがた アグリデータ'97.東京都労働経済局農林水産部農政課.
東京ドリーム(1997):野菜生産施設視察資料.東京ドリーム.