東京電力福島第二原子力発電所<2002年8月28日〜29日>


テーマ:
「原子力発電を事例に日本のエネルギー問題とその将来を考える」

コース:
1日目 日本大学文理学部集合→首都高速→常磐自動車道→Jヴィレッジ(昼食)→福島第二原子力発電所→エネルギー館→宿泊先
2日目 宿泊先→BWR運転訓練センター →小名浜(昼食)→常磐自動車道→新宿駅解散


目的:
各国の総発電量に占める原子力発電量の割合および日本のエネルギー資源量から,日本における原子力発電の意義を考える.
原子力発電に関してどのような環境問題があげられるか.各国に共通する問題と日本の特殊性を考える.
福島第二原子力発電所をもとに,日本の原子力発電の環境問題に関する取り組みを考える.

▲原子力発電所へ行く専用の橋
  (橋の下にはJRが通っている)


原子力発電について:
資源に乏しい日本において,今後も豊かな生活や産業活動を続けていくには,エネルギーの安定した確保が必要なのはいうまでもない.電気の利用は今後さらに高まっていくと考えられる.そして,原子力発電は現在では全体の40%を占めている.我々が原子力を使用する際に,その必要性・しくみ・安全性を考えなければならない.そして,原子力と日常生活との関連を認識しなければならない。
最近では,原子燃料(プルトニウム)をリサイクルしようとする「プルサーマル計画」がすすめられている.放射性廃棄物処理施設は青森県の六ヶ所村に設置されていて,現在再処理工場も建設中である.その他,核エネルギー・環境問題・原子力発電の解説については各専門書などを参考していただきたい.内容が多く,多岐にわたってしまうので,ここでは取り上げませんでした.


東京電力福島第二原子力発電所の概要:
福島第二原子力発電所は,福島県の太平洋岸,浜通り地域の富岡町・楢葉町にまたがって位置している.発電設備は,沸騰水型軽水炉(BWR)110万kWが4基で440万kWの出力である.発電した電気は,主に関東方面に送電されている.なお,3・4号機は東北電力と共同開発したことから,発電量の25%を東北電力に送電している.発電所の敷地は,海面造成地を含め150万uである.冷却水は海水を使用しており,取水したときよりも3度上昇して放水している.福島第二原子力発電所の特長をまとめると,国産機器の採用・保守点検作業効率性の向上・低圧タービンローター体鍛造化・廃棄物処理設備の集中化の4点である.なお,建設工程については,1号機の着工が1975年11月で運転開始が1982年4月となっており,4号機は1980年12月の着工で1987年8月の運転開始となっている.原子炉は運転停止しても数日で再開できるのだが,行政(おもに政府)との関連で数週間かかってしまうのが現状である.蛇足になるが,発電所建設に際し,住居の移転を余儀なくされた10の世帯には「10軒会」いう組織がつくられ,発電所と交流会などをおこなっているという.

▲使用済の冷却水を放水している様子 ▲4基の原子力発電設備
 (我々が行ったのは奥から2番目)



エネルギー館ついて:
エネルギー館は,福島第二原子力発電所付属の原子力広報施設である.福島第二原子力発電所の原子炉模型などの展示のほか,放射線を測定したり実際の放射線(α線など)を見ることができる.また,環境・リサイクル・エネルギーについての説明や展示をおこなっている.原子力発電所の仕組みや安全性,原子燃料サイクルについて紹介しており,電気や科学の知識を学ぶことができます.図書コーナーのなかでは,「トラブル報告書」のファイルが並んでいたのは興味深い.


BWR運転訓練センターについて:
原子力発電所の安全性としんっらいを担うため,運転員の養成と訓練を行なっているのがBWR運転訓練センターである.BWRとはBoiling Water Reactorの略であり,日本語では沸騰水型原子炉と呼ばれ,日本全国に29基ある.訓練センターは,日本に新潟と福島の2ヶ所しか存在していない.また,外国からの研修も受け入れている.運転訓練用シュミレータは,本物と同じ動き・実機と同じ制御盤・雰囲気も同じ制御室で構成されている.起こりうるトラブルのパターンは500ほど設定されていて,これらに対応できるよう訓練している.さらに,わざとトラブルを起こすシュミレータも用意されていて,まさに本番さながらである.1980年からは運転責任者認定制度による実技試験も行なわれている.訓練コースは初級から上級まであり,講義・シュミレータ・試験の繰り返しである.


見学を終えて:
まず,いいときに見学できたといえよう.この見学から,戻ってきた次の日にはご存知の通り,ニュースになっていました.今となっては,貴重な体験でした.しかし,発電所などでの説明が資料を見れば分ることばかりだったので,個人的には物足りなかった.もっとゆっくり,じっくりと見学したかった.さらに,撮影制限が多すぎたため,写真をほとんど撮ることができず,残念であった.欲を言えば,また行きたいのだが,当分の間無理そうである.核廃棄物の問題が深刻化するのは今から40年後だという.それを,考えたら我々よりもさらに若い中学生や小学校の高学年などで原子力発電所見学の機会を増やしていくべきだろう.しかし,そこには大きな障壁があって実現できないのがほとんどなのである.さらには,原子力や核,そして放射線についての正しい知識が必要であり,それにはまずこのような話題に対するマイナスのイメージをいかにして取り除くかが,東京電力にとっての課題であろう.

引率者:
佐藤キエ子教授(日本大学文理学部)  尾口俊一副手(日本大学文理学部地球システム学科)

関連サイト:
東京電力(株)
福島第二原子力発電所
財団法人 放射線計測協会
エネルギー館
日本大学文理学部地球システム科学科(巡検の内容は「環境地球化学研究室」の「巡検の予定・報告」にあります)
東京電力のPR館
東京電力による原子力情報
(株)BWR運転訓練センター
Jヴィレッジ ナショナルトレーニングセンター