大学における授業改善とTA制度<2002年4月2日>


■はじめに
 大学における授業改善とTA制度について,日本大学文理学部ではFD委員会が設置されています.
新規でTAになる人は,年度始めにTA講習会を受けなければなりません.私は,今年度のTA講習会において,TAの体験談を話す機会を与えられましたので,簡単に報告します.
 ちなみに,授業改善については「教育工学」という分野がすでに存在しています.やはり,アメリカがもとになっているようです.教育工学では,大学のような高等教育機関はあまり扱われてこなかったのでしょうか.教育工学関しては,私自身まだまだ不十分なので,これから勉強していかなければならないです.


■これは,TA講習会において話した内容を要約した文です.

 私は,地理学科専門の,実験・実習科目「コンピュータマッピング」のTAを勤めました.この体験をもとにTAのあり方について,少し考えみることにします.
 まず,実際にTAを担当してみると戸惑うことも多く,意外と難しいことに気づきます.例えば,学生や担当教員との接し方には気を使うことが多く,その授業内容に対する知識の必要性を感じることもしばしばです.正直なところ,担当するまではTAというイメージが浮かびませんでした.もちろん,学部のときにTAのついている実験・実習授業を受講していたことはあります.TAの講習会にも参加しましたが,よくわからないまま授業を迎えることになってしまいました.私の場合,実際にTAをするにあたり,最初は知識・能力を重視していたように思います.ところが,時間の経過とともに,学生とのコミュニケーションに重点を置くようになっていきました.当然,授業の最中に自分の知らないことについて学生から質問されこともあり,その時は学生と一緒になって考え,答えを見つけるように努力しました.また,授業以外のときでも質問されたら,できる限り丁寧に答えるよう努めました.
 実際,私の担当した授業は学科専門の実習とはいえコンピュータを扱うため,ときにはコンピュータの基礎的な質問も受けました.さらに,同じ作業内容でもいろいろな方法がある場合には,担当教員の指示した方法だけでなく他の方法も紹介しながら,学生とコミュニケーションをとるように心がけた記憶があります.意欲的な学生とそうでない学生が同じ空間で実習授業をしているので,それぞれのタイプに合わせて助言の仕方を変えたりしました.状況をみて,なるべくTAのほうから学生に声をかけるようにすることで,その後のコミュニケーションがスムーズになるように思います.しかしながら,私の担当した授業は半期だったためあっという間で,慣れてきたころにはもう終わりという状態でした.
 TAを担当することについては,良い面と悪い面とがあると思います.例えば,良い面として,「より多くの学生と関わりを持つことができる」,「自分自身の専門性の向上」,などが挙げられます.一方,悪い面としては,「自分の時間が少なくなる」,「コンピュータがトラブルを起こすと復旧に時間がかかる」,などがあります.私の場合は,授業担当教員が非常勤で自分も忙しかったこともあったので,授業時間以外での接触が少なく,もう少し授業以外のことも話す機会があればよかったと思います.
 もちろん私自身は,授業にTAを置くことに賛成です.マイナスの面もないわけではありませんが,教員・学生・TA各々にプラス面は大きいと思います.実習や実験では,個々の学生への対応が必要不可欠となるため,教員は1人で指導しきれないことがあるのは当然です.したがって,TAが基本的な作業や補助を行うことにより,教員はその授業の改善により多くの時間を費やすことができると思います.いずれにしても,円滑に授業が進行するためにはTAが必要であると考えられます.また,実験・実習において学生は講義とは比較にならないほど,個別の指導を受ける必要が生じてきます.質問に即応してくれる人がいないと作業が進まないので,TAが1人いるだけでも,効果は倍増するはずです.
 TAは大学内でお金を得られるという実利面もありますが,それ以上に自分の将来に有益な経験が得られます.それは,先に述べた専門性の向上もさることながら教育現場での経験を蓄積できる点にあると思います.自分自身,体験のしたことのある教育実習は,期間が限定されたものです.TAのように長期にわたり教育現場を経験し,一つの授業初めから終わりまで接することができることが,断片的な教育実習とは比較にならない体験になると思います.
 理想を言えば,教員を志望するTAにとって,教員とともに授業づくりにも参加できるのが最高だと思います.ただし,現行のTA制度では難しく,今後も実現に難しいかも知れません.ただ,機材の準備や指導の補助だけでなく,どうしたら効果的な授業になるか,どうしたら学生は能力を習得できるか,といったことをTAと教員の双方で考えられると,授業がよりよく改善されると思います.TAの多くは大学院生であり,将来教壇に立つ人も少なくないと思います.
 私の経験からTA業務を実行する上では,「担当教員との密な連絡」,「学生との関係づくり」に留意する必要があると思います.TAと担当教員との意思疎通が出来ていないと,授業そのものに支障をきたしてしまう恐れがありますが,本学部を専任としない教員の大半は,講師室に担当時間にしか来ないのが現状です.したがって,非常勤の教員ほど連絡は密にとらないと,いけないかも知れません.また学生に対しては,TAの立場上授業内ではできないことでも,時間外では可能なこともあります.学生との信頼関係をいかにつくっていくかが課題だと思います.
 幸いに今年度も,私は昨年同様にTAをする機会を与えられました.今年度は,学生の質問に対し,ただ答えるだけではなく,授業を通じて学生の理解にも努め,目を向けていきたいと思っています.また,単にTAとしてだけではなく,学生と授業以外でも良い関係を築き,良きアドバイスをしていきたいとも考えています.

 (2003.5 烏山記)

講演者:烏山芳織(yoshiori uyama)
所属:日本大学大学院理工学研究科地理学専攻 博士前期課程2年