千葉地理学会春の巡検(富浦)「内房地域の資源と可能性」<2003年5月18日>


■はじめに
 近年,東京湾アクアラインの開通・富津館山道路建設・館山自動車道延長等により東京・横浜方面との交通利便性が高まり,房総半島とのアクセスが容易になりつつある.また,2001年7月には,東京駅と安房白浜とを結ぶバスの定期便「房総なのはな号」も運行開始した.房総地域は,従来の宿泊型ではなく,もはや,日帰り型の観光地にシフトされてしまったのである.当然,観光事業も変動してきている.その拠点として注目されているのが「道の駅」である.自動車の使用による観光客が主である現在,「道の駅」はその地区の情報発信地でなくてはならない.そして,今もなお千葉県の内房地域において,高速道路の建設は急ピッチで進んでいる.従って,近い将来に高速道路が完成した場合,それぞれの市町村には,より高度なでかつ魅力ある地域振興や街づくりが求められてくるのは当然のことである.
 そこで,本巡検では,こうした状況下にある内房地域にスポットをあて,「道の駅」から,その地区の地域資源を見つめ,内房地域の将来展望を考えることを目的とする.
 また,房州びわが有名で,かつ近い将来に富津館山道路が延長開通する富浦町を対象として,この町の地域資源を探ることで,その将来性も考察することにする.房州びわについては,国道沿いの直売所やびわの観光農園を見学し,その一大資源を考察することにする.富浦町に高速道路が開通した後,国道沿いの直売所がどうなるか,興味深いところである.


■巡検要項

地 域:千葉県内房地域(安房郡鋸南町・富山町・富浦町)

テーマ:内房の地域資源とその可能性―びわ農園訪問・富浦町の小さな旅―

実施日:2003年5月18日(日)

おもなルート:JR保田駅集合→道の駅「きょなん」・菱川師宣記念館→道の駅「富楽里とみやま」→昼食→枇杷倶楽部(道の駅「とみうら」)→生稲農園(びわ観光農園)→大房岬自然公園→JR富浦駅解散

地形図:25,000分の1「那古」 「保田」    50,000分の1「那古」(リンク先は、地形図閲覧システム検索インデックスの「保田」です)



■巡検の写真はこちら

以下は,道の駅を中心に説明をしておきます.巡検地の様子や説明は,写真を参照ください.

道の駅について

 1993年に始めて設置された「道の駅」は2003年2月現在,全国に701の「道の駅」が存在するまでに至った.この道の駅についての概要を,国土交通省・全国「道の駅」連絡会の資料を用いて説明することにする.
地域の核としての「道の駅」
 長距離ドライブや,女性や高齢者のドライバーが増加するなかで、交通の円滑な流れを支えるため,一般道路にも安心して利用できる休憩のための施設が求められています。また、これらの休憩施設では,地域の文化,名所,特産物などを活用して多様なサービスを提供することが望まれています.さらに,これらの施設ができることで,地域の核が形成され,道を介した地域連携が促進されるなどの効果も期待されます,こうしたことを背景として,道路利用者のための「休憩機能」,道路利用者や地域の方々のための「情報発信機能」,そして「道の駅」 をきかっけに町と町とが手を結びあう「地域の連携機能」の3つの機能を併せ持つ休憩施設「道の駅」が誕生しました.

「道の駅」に求められる機能とサービス
「道の駅」は,駐車場・トイレ・電話の基本的な休憩施設と,地域の自主的工夫のなされた施設で構成されます.
◎提供サービス
 ◆駐車場
   24時間利用可能で,利用者が無料で利用できる十分な容量の駐車場
 ◆トイレ
   清潔で24時間利用可能.障害者用も設置.
 ◆案内・サービス施設
   原則として案内人がいて,道路や地域の情報を親切に提供.
◎設置場所
 休憩施設としての利用しやすさ,「道の駅」相互の機能分担の観点から選択する.
◎地域側施設の設置者
 市町村または市町村に代わりうる公的な団体.
◎配慮事項
 年少者・高齢者・障害者等,様々な人々の使いやすさに配慮.
 地域の優れた景観を損なうことのないよう、十分に配慮した施設計画.
概要とサービスに関するこの文章は,全国「道の駅」連絡会のホームページから転載した文に,一部修正・加筆したものである.詳細は,ホームページ等を参照されるか,直接問い合わせ頂きたい.

 また,道の駅を一体型・単独型と区別することがある.一体型とは,道路管理者が整備する駐車場と,市町村等が整備する地域振興施設が一体となって「道の駅」になるものである.単独型とは,市町村等が単独で駐車場,トイレ,地域振興施設を整備するものである.
 道の駅には認定と登録が必要で,登録しているからといって必ずしもその施設がオープンしているとは限らない.逆に,先に施設がオープンしていて,後で認定登録をするケースも存在する.道の駅が登録されるまでのフローについては,国土交通省道路局のホームページ閲覧が可能である.

参考資料およびホームページ
道の駅ハンドブック
国道交通省建設局のホームページ(http://www.mlit.go.jp/road/
全国「道の駅」連絡会のホームページ(http://www.hozen.or.jp/michieki/


関東周辺に「道の駅」の数
 国土交通省で「道の駅」を扱う場合,関東地区は1都6県に山梨と長野を加えた1都8県となっている.関東周辺の「道の駅」は,2003年2月現在で98箇所登録されている.登録数がもっとも多いのは長野県の22箇所である.次いで,群馬県の15箇所,山梨県・千葉県の14箇所となっている.一方,もっとも少ないのは東京都のゼロで,次いで神奈川県の2個所である.
 今年の2月までに94箇所がオープンし,4箇所は準備中であった.千葉県内でも道の駅「富楽里とみやま」が準備中であったが,4月にオープンした.これで,千葉県内にある道の駅はすべてオープンしていることとなった.

千葉県における「道の駅」
 千葉県における「道の駅」は,1993年の「とみうら」を皮切りに90年代は南部を中心に展開されていた.2000年になると大多喜町・沼南町・多古町が登録し,全県に波及していくことになった.
 県内における道の駅の分布をみても分かるように,現在は南部にある市町村のほとんどが登録していが,外房・九十九里地域全く登録されていない.また,半数以上が1997年のアクアライン開通後に施設認定をうけていることから,千葉県では,高速道路の新規開通が道の駅に対し影響しているのは確実である.したがって,今後は圏央道の建設と関連付けた見方が必要となる.
 県内で今後,道の駅ができるとしたら,野田などの北部,銚子などの東部という順で増えていくであろう.おそらく,九十九里地域は登録するとしても時間がかかると思われる.千葉県の南部地域では,道の駅は定着しつつあるが,その他ではまだ導入の段階にあるといえる.
 アクアラインの開通により,自動車交通の利便性が高まり,県外地域との時間距離も縮まった現在,道の駅のような施設はますます重要性を増していくとおもわれる.しかし,南部にこれ以上道の駅がつくられると,飽和状態となり競合関係が発生してしまうかもしれない.このように,千葉県内で「道の駅」の展開段階に地域差が生じているのである.県全体を平均してみると,当分の間は導入の段階であるといえる.
 とくに既存の道の駅でも,「とみうら」と「富楽里とみやま」は話題性が極めて高い.



●道の駅「とみうら」(枇杷倶楽部)
 「とみうら」は,県内初の道の駅であるだけでなく,2000年の道の駅グランプリで最優秀賞を受賞している.「とみうら」は,1993年に39億円かけて第3セクター方式で,枇杷倶楽部の名でオープンした.これは,富浦町が千葉県の観光農業振興策であるアクアリゾート推進事業第1号に指定されたことを契機に誕生したものである.

●道の駅「富楽里とみやま」(ハイウェイオアシス富楽里)
 「富楽里とみやま」は,高速道路のサービスエリアと一般道のドライブインが一体した施設となっており,全国初の試みとして注目を集めている.道の駅の認定に先駆け,現在の施設近くに「富山町物産センター富楽里」として実験的に運営されていた.地域振興施設のために,地域拠点整備事業としてサービスエリアを活用した「ハイウェイオアシス富楽里」事業を進めている.

<ハイウェイオアシスとは・・・>
高速道路等の休憩施設(サービスエリア等)と周辺地域とが一体となった魅力ある施設を整備することにより,高速道路等のお客様に憩いと潤いのあるスペースでくつろいでいただくために,休憩施設から直接車で出入りできる(第2)駐車場を周辺地域内に整備し,高速道路等と周辺地域等の利用促進を図ることを目的とした施設のこと.


■この巡検に関するリンク集

道の駅
富山PA地域拠点整備事業
びわ小冊子
【南房総いいとこどり】 枇杷倶楽部 -枇杷・花・イチゴ・観光・千葉-
千葉地理学会巡検