平成17年度日本大学医学部公開講座(第3回)


■2005年度公開講座実施要項

主 催:日本大学医学部
     板橋区教育委員会
協 賛:日本大学医師会
期 日:2005年5月7日(土)〜6月25日(土)までの毎週土曜日
時 間:14:00〜16:00(13:30受付開始)
場 所:日本大学医学部 記念講堂 (行き方や地図はこちら

講義日程:
第1回 5月 7日 (土) テーマ「老化と物忘れ」 
    講師:鈴木 裕 先生(内科学講座神経内科部門専任講師)
第2回 5月14日 (土)テーマ「腰痛の予防と治療」
    講師:徳 橋 泰 明 先生(整形外科学講座助教授)
第3回 5月21日 (土)テーマ「目の健康:緑内障」
    講師:山 崎 芳 夫 先生(眼科学講座助教授)
第4回 5月28日 (土)テーマ「小児期からの生活習慣病の予防」
    講師:岡 田 知 雄 先生(小児科学講座助教授)
第5回 6月 4日  (土)テーマ「しのびよる血管の病気」
    講師:根 岸 七 雄 先生(外科学講座心臓血管外科部門教授)
第6回 6月11日 (土)テーマ「家庭で行う褥瘡の治療と予防」
    講師:佐々木 健 司 先生(形成外科学講座教授)
第7回 6月18日 (土)テーマ「目の前で倒れた人に対する救急処置」
    講師:木 下 浩 作 先生(救急医学講座講師)
第8回 6月25日 (土)テーマ「脳とからだの健康法―代替医療の試み―」
    講師:酒 谷 薫 先生(脳神経外科学講座教授)

◇関連サイト
日本大学医学部
板橋区教育委員会生涯学習課


第3回
第3回 5月21日 テーマ「目の健康:緑内障
講師:山 崎 芳 夫 先生(眼科学講座助教授)

緑内障ガイドライン

◇おもな内容
ものが見える仕組み
 ・年齢別緑内障有病率のグラフ:岐阜県多治見市の事例40歳以上の住民を対象に眼科検診した結果
  →地域的特徴は地理学研究のそのもの
   全体で6%程度→40歳の成人に300万人が罹患していることとなる
 ・ものがみえる仕組みの図
  カメラと対比して説明すると分かりやすい。
 ・眼球の構造
  図でもって説明。カメラのフィルムに相当するのが網膜。
  カメラと眼の構造は同じだが,違いはフィルムが1つしかないのが人間でコマ送りできない。
 ・視覚情報の成り立ち
  逆さに写ったものは視神経で修正して伝える。
 ・眼球とカメラは類似している。角膜と水晶体はレンズの役割。
  角膜と水晶体は透明でなければならない。
  角膜と水晶体の細胞には酸素や栄養分が必要である。
 ・房水の流れ(図を使って説明)
  角膜と水晶体に対して,栄養を与える役割をしている。静脈に流れ出ていく。
 ・房水の役割
  A)角膜と水晶体への酸素や栄養分の供給,老廃物の排泄。
  B)眼球内部の圧力を一定に保ち,カメラとしての形状を維持する。
  房水が眼球内部での通過障害により,過剰に貯留し,眼球内から視神経を圧迫する状態が緑内障である。

緑内障とは図で説明)・・・より詳しい説明はこちらが参考になります.
  房水の流れが滞り,視神経を通って脳神経へいく途中で情報が途絶えてしまうものが,本来の病気。
  視神経が窪んでしまう,強い圧力を受けている状態の図を用いて説明。
  眼圧が上昇すると,視神経が圧迫され,陥凹がおこる
 
    ▽緑内障の分類
     A原発緑内障→今日のメインで4つある(開放遇角緑内障,閉塞遇角緑内障,
     B続発緑内障…全身疾患などにより,眼圧上昇が生じた緑内障
     C発達緑内障…先天性の異常により,眼圧上昇が生じた緑内障

 ・眼圧上昇の原因
   開放遇角緑内障と閉塞遇角緑内障についての図により説明。
 ・開放遇角と閉塞遇角の状態とその原因について
   房水の出口に物質が沈着し,房水の排泄を妨げる。
 ・閉塞遇角緑内障のメカニズム
   散瞳,水晶体膨化→瞳孔ブロック(水晶体と虹彩の癒着)→眼球内圧(眼圧)上昇
   瞳孔が大きくなる作用のもつ成分が含まれる薬は投与できないので,様々なところで,
   「緑内障ではないですか」という質問がされる。
   近眼の人は緑内障になりにくい。→水晶体と虹彩が離れているので。
   日本人は近眼が多いので,閉塞遇角緑内障になるのは,10分の1くらいの確率
 ・閉塞遇角緑内障の特徴
   症状:激しい眼痛と頭痛,角膜浮腫・散瞳など
 ・緑内障の病型別頻度
   原発開放隅角,正常眼圧,原発閉塞隅角
 ・眼圧値と緑内障
   正規分布系曲線の統計データにより説明
    →統計学的正常範囲は21mmhgとされているが,20以下でも緑内障になる人はいる。
      もともと眼圧の低い人で正常範囲でも緑内障になる(例えば8→16)
      →正常眼圧緑内障→結局のところ,眼圧の変化率が緑内障に影響しているのでは。
        眼圧は一生のなかでどのように変化するのかな?
 ・眼圧と正常眼圧緑内障
   眼圧の正常範囲は21mmhg未満
   眼圧は正常範囲内でも人により異なる
 ・正常眼圧緑内障のメカニズム(図で説明)
   眼圧と視神経の強さのバランスが崩れると緑内障になる
 ・緑内障の早期発見
   進行しないと自覚症状がない
 ・緑内障の診断と検査
   眼圧検査,眼底検査,視野検査,隅角鏡検査
 ・眼圧検査
   接触型,非接触型,
 ・眼底検査(写真で説明)
 ・視神経の変化
   緑内障の進行→正常,早期,中期,末期
 ・視野検査
   眼がみえなくなるのはかなり進行した状態なので,早期発見がかなり難しい。
 ・正常眼の視野
   上60度,下70度,横100度(外)・60度(内)
 ・視野の変化
   早期では自覚症状はほとんどない。
   末期でも真ん中だけ見えてれば,視力検査で1.0以上にもなる
 ・隅角検査
   開放隅角,閉塞隅角の鑑別
 
●緑内障の治療
   1障害を受けた視神経は再生しない
   2視神経の障害を最小限にする
   3眼圧をできるだけ下げる
   4定期的な経過観察を行う。
 ・緑内障治療の原則は点眼
   点眼で眼圧が下がらなければレーザー光線による治療
    1開放隅角→隅角光凝固術…静脈への出口をレーザー
    2閉塞隅角→虹彩光凝固術…根元にレーザーで穴あける
 ・点眼,レーザーで眼圧の下がらない場合,薬の副作用などの問題で手術することがある。
  →線維柱帯切除術
 ・線維柱帯切除術の術後成績(107眼)により,多くの症例は良好となる。
  しかし,入院期間は長期になる傾向
 ・緑内障疑い→精密検査→異常なし;年1回の定期検査,
                  異常あり;点眼治療→不変;点眼治療継続,
                                進行悪化;レーザー治療でよくなれば点眼治療,
                                                さらに進行→手術療法


◇まとめ
  ▽緑内障とうまくつきあう方法
    緑内障と診断されたら・・・
     1早期発見が第一;早期治療で進行割合4.4%,放置10.9%(5年後の進行率)
     2通院を欠かさない
       眼圧のコントロール
     3指示通りに薬を点眼・服用する
       緑内障治療薬には,徐脈や呼吸困難などの副作用がある。
       点眼したら,目頭を圧迫する。
     4病気を正しく理解し,心配し過ぎない
       多くの場合,生涯十分な視野や視力を保つことが可能になる。



◇おもな質問
・視神経が駄目になるのは,房水の流れが悪い以外にあるか
  →神経の強弱により,緑内障の進行に差があるが,どのようなのがよい悪いははっきり分からない。

・レーザー治療したが,いつまで眼圧を気にすればいいのか。また再発するのか。
  →まず,日常生活は普通にしてよいが,眼の構造上起こりやすい人もいるので,片目だけでなく両方レーザーやることがあり,まず再発はしない。

・日常生活で緑内障にかかりにくくする方法はるのでしょうか。
  →日常注意することはまずない。定期健診も大事だが,血縁関係の中に緑内障の診療を受けたことがある場合には,少し詳しい検査を受けてみてもよい。

・緑内障と糖尿病との関係について,教えていただきたい。
  →緑内障の分類で,原発の場合にはまず関係ないが,続発では全身の疾患によるおきる糖尿病網膜症があり,眼底出血を頻繁に起こしていると,続発緑内障になりやすい。

・父・姉が緑内障なのですが女性に遺伝するのでしょうか?
  →遺伝については,男女の差というのはない。




◇今回の講演内容から地理学研究への展望(最重要!)
 シンプルに,健康診断による緑内障患者の分布とその特徴をわが国において,空間スケールを変えて検討.そして背景要因の考察(岐阜県の調査事例の妥当性の検討も含めて・・・)といったところでしょうか.冒頭の岐阜県の事例が,日本における平均的な地域であることを検証しないと,そのデータでもって全国を表現しているのであるから,その先の解釈にも関わってくる.つまり,たとえ導入に使われたに過ぎないが,地理学的には,その先に奥深いものが見えてくるのです。


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